作品の原題は「CANNIBAL HOLOCAUST」である。原題自体には「食人族」による虐殺(ホロコースト)、「食人族(と定められた者たち)に対する虐殺」の二重の解釈が出来る。しかし、邦題の『食人族』は、そのような解釈性を台無しにしてしまい、非常におぞましい作品であるというイメージに華を添える格好になっている。「ORGY OF THE DEAD」が『死霊の盆踊り』にるような邦題の被せ方は、作品のトホホ具合を非常に良く体現している。しかし、『食人族』の邦題については、先にも述べた通り「本作品はフィクションである」という前提を踏まえた上では、いささか不釣合いであるようにも思えてくる。
映画の手法。フィクションとリアルの映像を織り交ぜることにより、観客の感覚を鈍らせるという点や、残虐なシーンで、敢えてのどかな音を利用したりなどは、今回語べきものではないので触れないでおく。そもそも、『ゾンビ』のような社会風刺的意図が含まれているとも、単なる露悪趣味であるとも解釈し辛い本作品を真面目に語ること自体、ナンセンスであるのかもしれない。それよりも、非常に気になる『食人族3―食人族VSコマンドー〔CANNIBAL HOLOCAUST : CANNIBAL VS COMANDO〕』を観賞し、そのキャンプさ加減に大爆笑する方がよっぽど健全であるな。