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続・JUNK屋日誌

blogへのテラ・フォーミング(2005/12/17)。遂に時代の流れには逆らえづ、本サイトの日記のみをblogへ移行。

『ある夢想家の手帖から』に対する夢想から

 沼正三『ある夢想家の手帖から』(都市出版版、三巻組)の第三巻目がやっとこさ読み終わる。果たして今日の自称M男性諸氏が、これらを読んで被虐心に陶酔するだろうか。

 沼先生は、マゾヒストは夢想家であり、観念的であり、ロマンチストであるという。事実、沼正三という人物も、筆名の元ネタとされる在野の性科学者Ernst Sumpf氏と同様、イデアルな人である。

 JUNKさんは変態とか倒錯とか逸脱とか、そこら辺りをずっとウロウロしてたり、それらについて考察し、書いたりしてると、世間でいうSだのMだのという区分はどうだってよくなってくるんだよね。

 被虐趣味も加虐趣味もないが、そういった世界に対しては、好奇心に突き動かされた窃視症(スコプトフィリア)じみた関心があるんだよね。窃視し、実践し、参加してみたい。何故なら、加虐者にしろ、被虐者にせよ、私は彼らの目から見える世界を知らないからだ。

 世の中は不思議なことに満ち溢れている。ことに、世の中には聞いてもいないのにSだのドSだのと主張し、まるで自らの身体と精神は甲殻類のような固い殻で覆われているがのごときことを主張する男性には事欠かない。彼らが真に、そして誠実にサヂストであるというならば、彼らは家畜や玩具のように虐げられる雄の獣畜の哀れな姿を見ても、性的まではいかないでも、興奮をしなければいけないはずだ。マゾッホの描いたギリシア人の如く。

 ここでサヂスト男性を殻のある甲殻類に例えたのに対し、マゾヒスト女性を例えるには、「ぬかに釘」という、実に言い得て巧妙な諺があることを思い出す。マゾヒスト女性は釘(観念的、肉体的、などを問わず)を打たれようとも、ずぶずぶと、釘を打った瞬間になにがしかの手応えはあれど、ただ貪欲に反動を吸収し続ける存在であろう。これは真なる下降願望(ドミナの前において畜生や非人間、従僕になることを至上の喜びとする、犬派[舌による奉仕を重視]、馬派[跨がられ重視])を持つ観念的・実践的の両マゾヒズム男性にも当てはまる。

 では一方、ドミナ、いわばS女性はどうだろうか。彼女(Sie)ら[ドイツ語の“Sie”は代名詞の“she”と尊敬語を兼ねる]は柔らかい皮膚の下に、釘を撥ね付ける、男権・父権制の歴史に対する反発によって鍛え上げられてきた固い身を隠している。これは固い殻の下に柔らかい身隠す、表層的なサヂスト男性に比べ、なんとも凛々しく、女らしい(ここでは『家畜人ヤプー』に倣って「男らしい」と同様の意味を持つ)ことか。

 夢想家に感化された、窃視症的なソクラテスのごとき好奇心、あるいは病める思考は止むことなく、今日もまた、脳髄の中で奇妙な知彗と戯れることで、日常に氾濫するノイズによって喚起される厭世感や劣等感を中和させているのだろう。しかし、それもまた、何も知らない私にとっては、知ることのないものであるため、仮定形にせざるを得ない。

渉猟
西川英明『職業殺し屋。』2巻
美内すずえ『聖アリス帝国』(文庫版)
和田真二『スケバン刑事』1巻(文庫版)
小田晋『狂気の構造』



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  1. 2009/07/21(火) 22:59:19|
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JUNK

Author:JUNK
 いわゆるトコ、侍魂以降のテキスト系サイトとして惰性してから早4年(2005年当時)。日記部のみblogに移行しました。それまでの素性とか、堆積物は「サイト」の方を参照で。現在の方は「mixi」とか。

 飲んだ暮れ。夢想家。澁澤シンパとみせかけて種村派。専攻は一応、文化社会学とか言いたいんだけど、実際の専門的らしい専門はない(と思う)。

『家畜人ヤプー』、沼正三、女性のサディズムと父権制におけるマゾヒズム、少女のエロティシズム、アリスイメージの消費、ロリヰタファッション、ヘヴィメタル、サタニズム、オカルト、タロット、少女小説、テクスト論、表層的SM批判、ジェンダー論、クィアスタディーズ、なんかよくわかんないけど色々。

 文化批評系よろず同人誌「Kultur Trieb」主宰。執筆者、購読者募集中。HPとかはまだ作ってないので、詳しくはmixi内のコミュを参照。

「Kluture Trieb」(mixiコミュ)


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割と、お仕事関連とか、読んだ本とか、クダラナイ話とかもつぶやき中。

@junk666
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